コストゼロで実現!中小企業担当者のための無料契約期間管理・更新リマインダーツール活用法
はじめに:契約期間管理、まだExcelで大変ではありませんか?
中小企業の経理部門や総務部門では、日々多種多様な契約書を取り扱っています。賃貸契約、保守契約、ライセンス契約、取引基本契約など、その種類は多岐にわたります。これらの契約にはそれぞれ有効期間があり、多くの場合、自動更新の有無や更新期日が定められています。
これらの契約情報をExcelなどで管理されている企業も多いことでしょう。しかし、契約数が増えてくると、シートが複雑化したり、担当者以外には分かりにくくなったりして、管理が煩雑になりがちです。そして何よりも懸念されるのが、「契約の更新を忘れてしまう」というリスクです。知らず知らずのうちに自動更新されてしまい不要なコストが発生したり、逆に更新が必要な契約を失効させてしまい業務に支障が出たりといった事態は避けたいものです。
こうした契約期間管理や更新リマインダーの課題に対し、専用の有償システムを導入するのはコスト的に難しいと感じる中小企業も少なくないと思います。しかし、ご安心ください。実は、今お使いの無料ツールや、コストをかけずに導入できるツールを組み合わせることで、この課題を効率的に解決することが可能です。
この記事では、中小企業の経理・総務担当者の皆様が、コストを抑えつつ契約期間管理と更新リマインダー体制を構築するための無料ツールの活用方法をご紹介します。
なぜ無料ツールで契約期間管理・更新リマインダーを?
契約期間管理や更新リマインダーに無料ツールを活用することには、中小企業にとって特に魅力的なメリットがあります。
- 大幅なコスト削減: 契約管理専用の有償システムは高機能ですが、導入やランニングコストがかかります。無料ツールを活用すれば、ITコストを最小限に抑えながら、必要な管理機能を実現できます。
- 業務効率化: 手動での煩雑なExcel管理から脱却し、期日の確認やリマインダー設定を自動化・半自動化できます。これにより、確認漏れのリスクを減らし、担当者の負担を軽減できます。
- 更新漏れ・不要な自動更新のリスク低減: 期日管理を仕組み化することで、重要な契約の更新忘れや、解約したい契約の自動更新といったリスクを防ぐことができます。これはコスト削減だけでなく、法的なリスク回避にもつながります。
- 情報共有の円滑化: 契約情報を一元化し、担当者間で共有しやすくすることで、担当者変更時の引き継ぎをスムーズに行ったり、必要な時に誰でも契約期間を確認したりすることが容易になります。
無料ツールは機能に制限がある場合もありますが、中小企業が必要とする基本的な契約期間管理やリマインダー機能であれば、十分にカバーできる可能性があります。
契約期間管理・更新リマインダーに使える無料ツールの種類
契約期間管理や更新リマインダーに特化した高機能な無料ツールは限られます。しかし、汎用的な無料ツールを賢く組み合わせることで、目的に合わせた管理体制を構築できます。ここでは、活用が考えられるツールの種類をご紹介します。
- スプレッドシート(Google Sheetsなど)+カレンダー(Google Calendarなど) 最も手軽に始められる方法です。スプレッドシートを契約情報の台帳として利用し、カレンダーツールで更新期日のリマインダーを設定します。多くの企業で既に利用されているツールなので、導入のハードルが低いのが特長です。
- 簡易データベース・台帳ツール(Notion、Airtableなどの無料プラン) スプレッドシートよりも構造的なデータ管理に適しています。契約情報を整理しやすく、カレンダービューや期日による絞り込み表示などが可能です。多くのツールにリマインダー機能も備わっています。
- タスク管理ツール(Trello、Asanaなどの無料プラン) 契約更新というタスクを管理するというアプローチです。期日設定や担当者割り当てが可能で、期日が近づくと通知を受け取れます。他の業務タスクと一緒に管理したい場合に有効です。
単一のツールで全ての機能を網羅することは難しいかもしれませんが、これらのツールを組み合わせたり、目的に応じて使い分けたりすることで、無料でも実用的な契約期間管理体制を構築できます。
具体的な無料ツールの活用方法:組み合わせ例
ここでは、多くの企業で利用されているツールを使った具体的な活用方法をご紹介します。
例1:Google SheetsとGoogle Calendarの組み合わせ
Google Sheetsを契約情報の台帳として使用し、Google Calendarをリマインダーとして使用する方法です。
- Google Sheetsで契約台帳を作成
- 新しいスプレッドシートを作成し、以下の項目を列として設定します。
- 契約名(例:〇〇システム保守契約)
- 取引先名
- 契約開始日
- 契約終了日
- 自動更新の有無(はい/いいえ)
- 更新期日(自動更新停止などの手続きが必要な期日。契約終了日の〇ヶ月前など)
- 現在の契約状況(有効/終了/解約手続き中など)
- 担当部署/担当者
- 契約金額(任意)
- 契約書原本の保管場所
- クラウドストレージ上の契約書ファイルURL(Google Driveなど)
- 備考
- 各行に契約ごとの情報を入力していきます。
- 更新期日の列には、契約終了日から逆算した期日を計算式で自動表示させるように設定すると便利です。
- [ここに契約台帳の列項目イメージ図を挿入]
- 新しいスプレッドシートを作成し、以下の項目を列として設定します。
- Google Calendarにリマインダーを設定
- Google Sheetsで管理している契約の「更新期日」をGoogle Calendarに登録します。
- イベント名には「【契約更新リマインダー】契約名:取引先名」のように、誰が見ても分かる名称をつけます。
- 期日にイベントを作成し、繰り返し設定は行わず、単発のイベントとして登録します。
- 通知設定を複数設定することをおすすめします。例えば、「期日の2週間前」「期日の3日前」のように、余裕をもって対応できるタイミングで通知が届くように設定します。
- 必要であれば、契約台帳のGoogle Sheetsへのリンクをイベントの説明欄に貼り付けておくと、すぐに詳細を確認できます。
- 担当者と情報を共有したい場合は、共有用のカレンダーを作成し、そこに登録します。
この方法のメリットは、すでに多くの企業が利用しているツールを使える点と、柔軟に項目を追加できる点です。デメリットとしては、カレンダーへの登録を手動で行う必要があるため、登録漏れのリスクがあること、膨大な契約数になると管理が大変になることです。
例2:Notion(無料版)を活用した管理
簡易データベース機能を持つNotionの無料版を利用する方法です。より構造化された管理が可能になります。
- Notionで契約管理データベースを作成
- 新しいページを作成し、「Database - Inline」または「Database - Full page」を選択します。
- カラム(プロパティ)に、契約名、取引先名、契約開始日、契約終了日、更新期日、担当者、契約書URLなど、Google Sheetsと同様の項目を設定します。各項目は「テキスト」「日付」「URL」「担当者(Person)」「チェックボックス」「セレクト」など、適切なタイプを選択します。特に「日付」プロパティはリマインダー設定に必須です。
- [ここにNotionデータベースのプロパティ設定例図を挿入]
- 契約情報を入力し、ビューを設定
- 各行に契約情報を入力していきます。
- データベースの「ビュー」機能を使って、情報を様々な形式で表示できます。
- 「Table view」で一覧表として表示
- 「Calendar view」で期日をカレンダー形式で表示
- 「Board view」で契約状況(例:有効、更新間近、解約手続き中)ごとにカンバン方式で表示
- リマインダー機能を活用
- 日付プロパティ(例:更新期日)に対し、リマインダーを設定できます。日付入力時に「Remind」をクリックし、「On the day of event」「〇 days before」などを選択します。複数のリマインダーを設定することも可能です。
- Notionの通知機能を通じて、指定した日時にリマインダーが届きます。デスクトップ通知やモバイル通知も利用可能です。
- リマインダー通知から直接該当の契約ページを開けるため、スムーズな対応が可能です。
- フィルタリング・ソート機能を活用
- 特定の条件(例:「更新期日」が来月、「担当者」が自分)で絞り込んで表示したり、期日順に並べ替えたりすることが容易です。
Notionのメリットは、スプレッドシートより高機能で視覚的な管理が可能であること、リマインダー機能が組み込まれていることです。デメリットとしては、Notionの操作に慣れる必要があり、スプレッドシートほど多くの担当者がすぐに使いこなせるわけではない可能性がある点、無料版にはブロック数などの制限がある点です。ただし、契約管理データベースとしては無料版の範囲でも十分な容量を持つことが多いです。
無料ツール利用の注意点・限界
無料ツールはコストがかからない魅力がありますが、利用にあたってはいくつかの注意点や限界も存在します。これらを理解した上で活用することが重要です。
- 機能制限: 有料版に比べて使える機能が制限されていることがほとんどです。例えば、データ容量、利用できるテンプレートの種類、他のツールとの連携機能などに制限がある場合があります。管理したい契約数や情報を考慮し、無料版でどこまでできるかを確認しましょう。
- 利用人数制限: 無料版は少人数での利用を想定していることが多く、利用できるユーザー数に制限がある場合があります。部門全体で利用したい場合など、必要な人数に対応できるか確認が必要です。
- サポート体制: 無料版ユーザー向けのサポートは限定的であるか、ほとんど提供されない場合があります。ツールの使い方やトラブル発生時に、自力で解決する必要がある可能性を考慮しておきましょう。
- セキュリティ: 契約情報は会社にとって非常に重要な情報です。無料のクラウドツールを利用する場合でも、そのツールの提供元がどのようなセキュリティ対策を講じているか(データ暗号化、アクセス権限設定、二段階認証など)を確認することが大切です。信頼できる大手サービスを利用するのが無難でしょう。
- 広告表示: 無料版ツールでは、画面内に広告が表示されることがあります。業務の邪魔にならないか確認が必要です。
- 運用管理の手間: 特に複数の無料ツールを組み合わせて利用する場合、それぞれのツール間の連携を手動で行う必要があったり、複数のツールを使い分けること自体が手間になったりする可能性があります。
これらの限界を踏まえ、自社の状況や管理したい契約情報の重要度・量に応じて、最適な方法を選択することが求められます。無料ツールで運用を開始し、課題が出てきた段階で有料ツールの検討にステップアップするという考え方も有効です。
ツール選定・導入のポイント
無料ツールを活用して契約期間管理・更新リマインダーの仕組みを構築する際には、以下のポイントを考慮してツールを選定・導入することをおすすめします。
- 管理したい契約数と情報の複雑さ: 現在および将来的に管理が必要となる契約件数はどのくらいか、また管理したい情報の項目は多いか少ないかによって、適したツールや組み合わせが変わります。少ない件数であればスプレッドシートでも十分ですが、多い場合はデータベース型のツールが向いています。
- 使いやすさと担当者のスキルレベル: 導入するツールが、実際に利用する経理・総務担当者にとって使いやすいか、操作を習得するのにどの程度の時間やスキルが必要かを確認します。最新のクラウドツールに不慣れな場合でも、直感的に操作できるものが望ましいです。
- 情報共有とアクセス権限: 契約情報を誰と共有する必要があるか、また部署外の人が参照する必要はあるかなどを考慮します。ツールに適切なアクセス権限設定機能があるかどうかも重要です。
- 既存業務との連携: 現在の契約書保管方法(紙、ファイルサーバー、クラウドストレージなど)や、他の関連業務(経理システム、文書管理システムなど)との連携の必要性を検討します。無料ツールでの直接連携は難しいことが多いですが、ワークフロー全体の中で無理なく組み込めるかを確認します。
- セキュリティポリシー: 会社の情報セキュリティに関する方針や規程を確認し、利用を検討している無料ツールがそれを満たせるか検討します。特に機密性の高い契約情報を扱うため、提供元のセキュリティ対策について事前に情報収集を行いましょう。
いきなり完璧なシステムを目指すのではなく、まずは必要最低限の機能で無料ツールでの運用を始め、効果を確認しながら改善していくアプローチが現実的です。
まとめ
中小企業の経理・総務担当者の皆様にとって、契約期間管理や更新リマインダーは非常に重要でありながら、手間のかかる業務です。高額な専用システムを導入しなくても、Google SheetsやGoogle Calendar、Notionといった身近な無料ツールを組み合わせたり活用したりすることで、コストを抑えながら効率的な管理体制を構築することが可能です。
無料ツールには機能やサポートに限界はありますが、まずはスプレッドシートとカレンダーでの管理から始めたり、簡易データベースで情報を一元化してみたりと、できることから着手してみてはいかがでしょうか。
コスト削減というミッションを持ちつつ、契約更新漏れのリスクを減らし、日々の業務負担を軽減するために、ぜひこの記事を参考に無料ツールを活用した契約期間管理に取り組んでみてください。自社に最適なツールを見つけ、安全かつ効率的な運用を実現することを願っております。
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